多関節ロボットとは?| 種類や用途、導入のメリットを解説
2025/09/26
コラム記事

製造業の自動化・効率化を支える存在として、産業用ロボットの重要性はますます高まっています。中でも「多関節ロボット」は、柔軟な動作と高い汎用性を備え、幅広い工程で活躍しています。
本コラム記事では、多関節ロボットに改めて注目し、基本的な種類や用途、導入によるメリット、そして課題についてわかりやすく解説します。
目次
多関節ロボットとは
多関節ロボットは、人間の腕のように複数の関節(軸)を持ち、自由度の高い動作が可能な産業用ロボットです。回転・伸縮・傾きなど複雑な動作を組み合わせることで、立体的な作業や狭いスペースでの動作にも対応できます。
多関節ロボットの種類
垂直多関節ロボット
人間の肩やひじ、手首に相当する関節(軸)を備えており、人間の腕の動きに似た複雑な動作や手首姿勢が可能なロボットです。6軸タイプが主流ですが、4軸、5軸、7軸タイプもあります。溶接、組立、搬送など、多岐にわたって活用されています。最近ではこの構造の協働ロボットが注目を集めています。
水平多関節ロボット(スカラロボット)
水平方向に配置された複数の回転軸と、垂直方向に上下動する軸で構成されたロボットです。組立や搬送などの工程で広く採用されています。代表的なものにスカラロボット(SCARA : Selective Compliance Assembly Robot Arm)があります。
ここまでの説明を読んで、「パラレルリンクロボットも複数の関節を持つのだから、多関節ロボットに含まれるのでは?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、どちらも複数の関節を持つ点では共通です。しかし、JIS規格では「多関節ロボット」と「パラレルリンクロボット」は構造上の違いに基づいて明確に区別されており、産業用ロボットの分類上も一般的に別のカテゴリとして扱われています。

導入検討の際には、それぞれの特性も理解したうえで、目的に合ったロボットを選定するようにしましょう。
「産業用ロボット」や「協働ロボット」については、こちらのコラムも参考になります。ぜひご覧ください。
多関節ロボットが活躍する業界・用途
多関節ロボットは、柔軟性と汎用性の高さから、さまざまな業界に導入されています。以下にいくつかの業界と用途の例を紹介します。

自動車・EV
- 車体の溶接・塗装・組立
- EVバッテリのモジュール組立や搬送

電気・電子機器
- 基板の実装
- 部品の組立、検査、搬送

食品・医薬品・化粧品
- 衛生環境下での包装・仕分け・搬送

機械加工
- マシンテンディング
(工作機械への供給・取出し)
- 研磨・切削などの加工

物流・倉庫
- パレタイジング(積付け)
- デパレタイジング(取出し)
- 仕分けや搬送

教育・研究機関
- ロボット工学の実習
- AI連携の研究開発
- 次世代技術の検証・実装
アーク溶接やスポット溶接など、複雑な動作や、長時間の連続運転を安定して行うことができます。


部品の位置決め、ネジ締め、挿入など精度が求められる組立作業に対応できるため、作業の効率が上がり、製品の品質も向上します。


重量物の搬送、仕分け、積み上げ作業を自動化し、作業負荷の軽減と生産性向上を実現します。


均一な塗膜を高速で塗布できるため、塗装品質の安定と作業環境の改善に貢献しています。


多関節ロボット導入のメリットと課題
多関節ロボットの導入には、一般的に以下のようなメリットがあります。
・人手不足の解消
・人件費の削減(省人化)
・生産性の向上(稼働率アップ)
・品質の安定化(不良率低下)
・設備の柔軟性(フレキシビリティ)
・重筋作業や危険作業からの解放
・多品種対応による受注機会の拡大
このように長期的には高い収益性をもたらす可能性がある一方で、導入には以下のような課題が存在します。
・初期投資コスト : 高性能なロボットや周辺機器の導入には、一定の初期費用がかかります。
・導入、立ち上げの手間 : ロボットの設置、ティーチング、周辺設備との連携など、専門知識や経験が求められる場面もあります。
・保守・メンテナンス : 定期的なメンテナンスが不可欠です。故障時の対応や部品交換など、保守体制の整備が重要になります。
多関節ロボット導入のポイント
多関節ロボットを導入し、その価値を実感するためには、以下のようないくつかの押さえておきたいポイントがあります。
導入目的の明確化
まずは「何のためにロボットを導入するのか」を明確にすることが重要です。省人化、品質向上、作業の自動化など、目的によって必要な機能や性能が異なります。
現場環境、作業内容との適合性
ロボットのサイズ、可搬質量、動作範囲などが、既存の設備や作業スペース、作業内容に適しているかを確認します。周辺機器との連携や安全対策も含めた設計が求められます。
人材育成、運用体制の整備
ロボットの操作・保守を担う人材の育成や、技術支援体制の構築も重要です。ティーチングやトラブル対応がスムーズに行えるよう、関係機関が提供する教育や外部サポートの活用も検討しましょう。
導入後の保守・メンテナンス体制が整っているかどうかは、長期運用の成否を左右します。メーカや販売代理店のサポート内容を事前に確認し、トラブル時の対応スピードや部品供給体制もチェックしておくと安心です。
スモールスタートの検討
初めて導入する場合は、まずは一部工程への導入から始め、効果を検証しながら段階的に拡大する「スモールスタート」も有効です。リスクを抑えつつ、現場に合った運用方法を見つけることができます。
多関節ロボットの選定に困ったときは
多関節ロボットの選定には、前述の課題を踏まえ、導入目的に合った機種選定や運用体制の構築が成功の鍵となります。
ファナックでは、以下のような強みを活かし、お客様のニーズに応じた最適な提案が可能です。
■ 豊富なラインアップ
可搬質量500グラムの小型ロボットから2.3トンの大型ロボット、人と一緒に作業することができる協働ロボット、国際防爆規格に対応した塗装ロボットなど豊富なラインナップを取り揃えています。
■ 高い信頼性
初めてロボットを導入する場合でも、専門スタッフによる丁寧な支援により、安心して導入・運用が可能です。万が一のトラブルにも迅速に対応できる体制が整っており、安定した生産活動を長期的に支えるパートナーとして、多くの企業様から信頼をいただいています。
■ コストに見合った最適な一台
ファナックなら、安心した生産活動を継続するためのトータルコストに見合った最適なロボットが見つかります。
■ 安心のサポート体制
国内外に広がるサービスネットワークと、長年にわたる開発、生産、販売の実績とノウハウを活かし、導入前の相談から設置、運用、保守に至るまで、一貫したサポート体制を提供しています。
■ 実務に即した研修体制
工場の品質向上や生産性改善、コスト低減に貢献するため、実務に即した実習を中心とした研修コースを常時開設しています。豊富な経験を持つ講師陣が、ものづくり現場で役立つ知識と技術の習得をサポートいたします。